
突然ですが、上野小のみなさん、この魚が何だか分かりますか。
そう。「やまめ」です。きれいな川の上流にすむ魚ですね。神流川にもたくさんいます。

では、この魚は分かりますか。
この魚は「さくらます」といいます。体長は60cmくらい。大きなものでは5kgをこえるものもいます。鮭のようですよね。
最初の「やまめ」と、この「さくらます」。色も大きさもまったくちがうのですが、実は同じしゅるいの魚なんです。おどろきますよね。
このように姿や形が変わってしまうのには、いろいろな説があるのですが、その中の一つを紹介しましょう。題して、


初冬をむかえるころ、川底に産まれたやまめの卵がかえり始めました。

はじめは、卵の養分で生きていたやまめの子たちですが、だんだん
大きくなり、川にすむ虫たちを食べながら成長していきます。

からだの模様も、きれいに浮かび上がってきました。あれっ、1匹、模様の
うすいやまめの子がいます。からだもなんだか、一回り小さいようです。

「あっ、虫だ」

「だめだぞ! ここはオレのなわばりだ! あっちに行け!!」
仕方なく、流れの下の方に場所を移動しました。

「よしっ、今度こそ」

「おいっ、先にいたのはこっちだぞ! ぶれい者め!! おまけにからだの色も
へんてこりんじゃないか! さっさとどこかへ行け、みにくいやまめの子め!」

みにくいやまめの子は、なわばり争いに負けてしまいます。仕方がないので、だれにも
じゃまされない、自分が生きられるぎりぎりの下流域で過ごすことにしました。

翌年の春、雪どけ水で増水した川で身をかくしながら、みにくいやまめの子は考えました。
「このまま、川のいきおいにまかせて、流れの先の世界へ行ってみよう!
だれにもいじめられない世界へ!」

みにくいやまめの子は、大海原(おおうなばら)へ旅立ちました。海は、ごちそうがいっぱい。
おいしい物をたくさん食べることができました。からだはどんどん大きくなります。

でも、いいことばかりではありません。川ではあったことのない危険がたくさんあります。

みにくいやまめの子は、ひとりで食べ物のとり方や身の
守り方を学び、生きる知恵(ちえ)と強い力を身につけました。

そして海へ出てから2年後、みにくいやまめの子はうまれた川に帰ってきました。
身体は川にいた時の何倍もの大きさになり、うすい桜色をまとった銀色の魚体。
そう、みにくいやまめの子は「さくらます」になって帰ってきたのです。

みにくいやまめの子を追いやったやまめたちは、この大きな魚におどろき、岩のかげにかくれて動けません。さくらますとなった今なら、みにくいやまめの子に意地悪したやまめたちに
しかえしすることができます。

でも、さくらますは、しかえしするどころか、意地悪なヤマメともなかよく過ごし、
ともに卵をうむ行動するのです。みにくいやまめの子だったさくらますは、からだ
だけでなく、心も大きくなって帰ってきたのですね。

新しい卵が川底に見えます。この子たちもさくらますのように優しく大きく育ってほしいですね♪
上野小のみなさんも、この休みの期間をチャンスととらえ、「さくらます」のように体も心も大きくなるようにがんばってください!